[お知らせ]


2014年9月4日木曜日

Proportional Reporting Ratios(PRR)について

薬品の市販後の有害事象報告に関する自発報告は本邦でも増加しているようです。このような自発報告からの医薬品有害事象シグナル検出という手法が薬剤と有害事象関連評価に用いられています。シグナルとは「今まで知られていなかった、あるいは根拠が不十分であった有害事象と医薬品の因果関係の可能性に関する情報」と定義されています。

シグナル検出は日本では日常的に使用されていませんが、海外では実利用されており、実際に論文も出ています。

Prescription drugs associated with reports of violence towards others.

この研究はFDAに報告された有害事象レポートを用いて薬剤と暴力的行動に関する有害事象との関連性をシグナル検出という方法で検討したものです。アウトカムはProportional Reporting RatioPRR)で示されています。このPRRとはいったいなんなのか、個人的に疫学的なリスク指標としてはなじみが薄い印象でした。


注目している
医薬品
注目している医薬品以外の全医薬品
合計
注目している有害事象
a

b
e
注目している有害事象
以外の全有害事象
c
d
f
全有害事象

g
h
n

上の表においてPRRとは以下のように定義されています。

PRR=(a/g)/(b/h)

すなわち注目していいる医薬品の全有害事象にしめる注目している医薬品の有害事象割合と注目している医薬品以外の全医薬品の全有害事象に占める注目している医薬品以外の注目している有害事象との比で示されます。(長い…)

[リファンピシンのブドウ膜炎を例に]

リファンピシン
リファンピシン以外の全医薬品
合計
ブドウ膜炎
41

754
795
ブドウ膜炎以外
の全有害事象
全有害事象

55
592712
592767

RRR=(41/55/754/592712)=586
英国Medicines and Healthcare Products Regulatory AgencyMHRA)ではこのPRR値と同時にχ2値も算出します。

χ2n(|ad-bc|-n/2)2/(efgh)


MHRAではシグナル検出のカットオフ値をPRR>2、χ2値>4、報告数>2を基準としているそうで、未知の有害事象においてはこれら3条件が満たされればシグナルとして分析を開始するそうです。このような自発報告からのシグナル検出は有害事象の存在可能性を推測するものであり、直接因果関係を示しているわけではありません。しかしながら未知の有害事象探索において、その存在可能性を迅速に検出するための方法論として今後の動向に注目です。

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