[お知らせ]


2014年9月29日月曜日

国際的緊急事態であるエボラウイルス感染(The International Ebola Emergency)

N Engl J Medにここ最近エボラウイルス関連の記事が立て続けに掲載されています。少しずつ読んでいこうと思います。拙訳ではありますが、以下の記事をご紹介いたします。誤訳等あるかと思いますがご容赦ください。

The International Ebola Emergency

88日、33週間というエボラウイルス流行の記録史上、最長、最大、そして広範な流行規模の現状からWHOは国際的な懸念を要する公衆衛生上の緊急事態PHEICだと宣言した。この宣言は決して軽視できるようなものではない。PHEICは主要な国際保健上の脅威の封じ込めに196カ国によって法的拘束力を有する合意である国際保健規則(IHR)の公式文書である。

88WHO事務局長マーガレット·チャンは、独立IHR緊急委員会からの助言に従ったと述べた。すべての入手可能な証拠の確認し、委員会は、エボラの更なる国際的な広がりが深刻な結果をもたらす可能性があると結論付けた。その懸念はエボラウイルスによる高い致死率誇る医療施設をはじめ、保険サービスが貧弱である、ギニア、 リベリア、 シエラレオネ、 ナイジェリア、その他感染の危険性のある他の近隣諸国など西アフリカ地域における持続的な感染拡大であった。

公衆衛生緊急事態は、すべてのIHRの署名者への迅速な結果をもたらす。現時点で影響下にある4つの国において緊急委員会は、いくつかの提言を行った。各国のトップは、国家災害管理システムを有効化し、国家の非常事態を宣言し、緊急オペレーションセンターを確立する必要がある。感染者やその接触者の国際的移動があってはならない。強烈な感染エリア - 特にシエラレオネ、ギニア、リベリアの国境域- 影響下にある人々への集団的な臨床ケアの提供は人々の動きを低減させるベースとなることが可能である。感染の拡散のリスクを低減させるために葬儀と埋葬が完全に訓練された人員の存在下で行われるべきである。必要であれば、検疫などの臨時の補助的措置を考慮しても良い。これらの推奨事項は、特別な事態への強い対応を含むものだがしているが、威圧的高圧的なものをではない。むしろ、彼らの理解と影響を受けたコミュニティの協力を得て導入すべきである。

現在の流行は、以前のEVDの流行よりも多くの感染症例や死亡の原因となっている。それは、ギニアのGuéckédou地区に端を発しているように推測される。最初のケースは、201312月に記録されたがそのケースは、おそらく今回の流行の発端ではなかった。20144月の終わりまで、ほとんどのケースは、ギニアから、少数はリベリアとシエラレオネの国境を接する部分で報告された。
4月下旬には、ギニアでのケースレポートの減少が流行の鎮静化し始め、一国に絞られたというような希望を与えた。この希望的観測はリベリアとシエラレオネの確定患者数が5月の間に急激な上昇が見られたが放棄された。

816日までにナイジェリア及び最悪の影響下にある3国の累積感染例、疑い例は2240例、死亡者は1229例に及ぶ。症例の死亡者数は致死率55%を意味する。ただし、いくつかの症例数および死亡数は(おそらく多くの)見逃してきたので、この推定値は、おおよそのものである。特に、流行初期にギニアでのトレースは決して十分ではなく、のためのさらなる機会を許してしまった。また致死率は30%から90%までの範囲であり地理的なサイト間で顕著な差を認める

症例の最大数は728日始まる週に報告されたが、ギニア、リベリア、シエラレオネからのデータ解析から発生率が減少し体系化されてきていることが示唆されたものの、流行が制御下にあるという説得力のある証拠はない。そして、最近発見されたギニア、リベリア、またはシエラレオネとの国境を共有していないナイジェリアからの症例は、アフリカ全土や他の大陸に広く蔓延する危険性を強調している。即時の健康への懸念を超えて、エボラウイルス感染症は人道的、経済的緊急事態になってきている(学校が閉鎖され、農業や鉱業に従事する労働者が被災地を離れ、国境を越えた商取引が鈍化しているという脅威にさらされている。)

私たちは、まだエボラワクチンまたは特定の抗ウイルス治療を有していない。しかしながら過去や現在の知見は感染制御措置により感染の蔓延を阻止できることを示している。感染ルートは明確である。血液、分泌物、器官、または感染者の他の体液との直接接触がある場合、感染の可能性が高い。そして症状が(ウイルスが体液中で持続する)治まった後でも、感染残ることがあります。エボラの主要な動物リザーバは、おそらくオオコウモリであり、ヒトへの感染は、家畜ブタおよび霊長類を含む中間哺乳動物宿主からの感染によるものだと考えられるしかし、この流行は、ほぼ確実に物理的な接触を通じて人から人への伝達によって維持されている。感染した体液との接触が大きなリスクを運ぶが、エボラウイルスは通常、大規模な集団において急速な普及をすることは稀である。前回の流行データより、西アフリカにおける麻疹では1症例から1417症例を生み出すと言われているのに対してエボラは1症例から13例にとどまると考えられている。

これらの観察は、感染制御のために即時必要な優先順位を指し示す。患者の隔離と早期診断、 接触者追跡、 実験室でのバイオセーフティに関するガイドラインを厳守、  すべての医療従事者によるバリア看護手順および個人用保護具の使用、汚染されたオブジェクトや地域の消毒、安全な埋葬。エボラの患者は、対症療法や集中治療を必要とし、臨床報告においては、より良い対症療法が患者の生存期間を改善する可能性を示唆している。そのため緊急オペレーションセンターの設立は、非常に重要である。

当然ながらこれらの感染制御情報は簡潔に列挙されている。臨時のリソースがエボラ流行に際してあらゆる健康サービスが必要とされるが、保健医療サービスに必要な人材は人員不足であり、流行が長引く恐れがある。基本的な個人防護服や検査施設などの規模は限られており、接触者を十分追跡できないことが診断の遅れにつながっている。これらの問題の上に、保健サービスは恐怖や差別の微妙な空気の中で遂行せざるを得ない確認された症例の患者の中にはその接点情報に関して医療チームによるフォローアップを逃れてしまっている。(これが潜伏期の3週間をカバーするに十分な期間を費やしている)一部の患者とその接触者は、地域を追放された。その地域ではエボラが魔法の産物であると考えられている。医療従事者は、それらが直面するリスクを認識している。150以上の医療従事者は、すでに感染しており、少なくとも80人が死亡している恐怖はまた、国内および国際的な医療チームに対する敵意になっており、研究室に不可欠な機器やサンプルの輸送や医療提供が阻害されている

この流行は前例のない規模が驚きではあったが、その国際的な対応はむしろしっかりと進められている。88日は流行阻止のために計画が宣言されている。ギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリアで成立さするために、2014年末までに少なくとも1億ドルの費用がかかる。計画の主要な要素は サーベイランスを通じて現場対応を強化する、症例の調査、患者のケア、 接触者の追跡、国際対応の調整。各国政府の支援、世界銀行が資金ギャップを埋めることを約束した。国家レベルでは、リベリア、ナイジェリアは国家緊急事態を宣言しており、空港や港湾から出入国者のスクリーニングを行っている。ギニアはリベリア、シエラレオネとの国境を閉鎖しました。リベリアの国立伝統評議会のメンバーは、全国の地域社会に対処してきた。域社会の関与が不可欠である。私たちはすでにどのように見てきたように、Téliméléにおいて、感染の伝播は地域社会における地元の指導者の指示を受けて縮小した。


私たちは、毎週毎週、発生率の持続的な減少や感染サインのない地域の拡大を期待している。ここ数日から数週間においてそれが感染を防止し、人命を救う指標となるからである。

2014年9月18日木曜日

クロピドグレルとACE阻害薬の併用に関する最新報告から

クロピドグレルとACE阻害薬に関する薬物相互作用に関する大変興味深い報告です。現段階で両薬剤の併用に関する公式な書面での注意喚起はなされていません。以下の論文はアブストラクトしかフリーで読めませんが、一読の価値ありです。以下、拙訳ですが、アブストラクトの全訳をご紹介いたします。

【文献タイトル・出典】
Clopidogrel bioactivation and risk of bleeding in patients co-treated with ACE inhibitors after myocardial infarction: A proof of concept study.

Abstract
Clopidogrel is an oral antiplatelet prodrug, the majority of which is hydrolyzed to an inactive metabolite by hepatic carboxylesterase 1 (CES1). Most angiotensin-converting enzyme inhibitors (ACEIs) are also metabolized by this enzyme. We examined effects of ACEIs on clopidogrel bioactivation in vitro and linked the results with a pharmaco-epidemiological study. In vitro, ACEIs inhibited CES1-mediated hydrolysis of a model substrate, and trandolapril and enalapril increased formation of clopidogrel active metabolite. In 70 934 patients with myocardial infarction, hazard ratios for clinically significant bleeding in ACEI-treated patients co-treated with or without clopidogrel were 1.10 (95% confidence interval [CI] 0.97-1.25, P=0.124) and 0.90 (95% CI 0.81-0.99, P=0.025) compared to patients that did not receive ACEIs. This difference was statistically significant (P=0.002). We conclude that co-treatment with selected ACEIs and clopidogrel may increase the risk of bleeding. Combination of in vitro and pharmaco-epidemiological studies may be a useful paradigm for assessment of drug-drug interactions.

クロピドグレルは、経口抗血小板薬のプロドラッグであり、その大部分は、 肝臓のカルボキシルエステラーゼ1CES1)によって不活性代謝物に加水分解される。また大部分のアンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害薬)も、この酵素によって代謝されると言われている。
私たちは、in vitroにおけるクロピドグレルの生物活性化に対するACEIの影響を検討し、薬理疫学研究での結果とリンクさせ考察した。
in vitroでは、ACE阻害薬は、CES1で代謝されるモデル基質の加水分解を阻害し、トランドラプリル及びエナラプリルは、クロピドグレル活性代謝物の生成を増加させた。
心筋梗塞を有する70934人の患者における臨床研究ではACE阻害薬を使用していない患者に比べてACE阻害薬を使用中の患者では、クロピドグレルの併用があった場合、出血のハザード比が1.10 (95%信頼区間 0.97-1.25, P=0.124)であり、併用がなかった場合のハザード比が0.90 (95%信頼区間 0.81-0.99, P=0.025)であった。この差は統計的に有意であった。(P=0.002
ACE阻害薬とクロピドグレルとの併用治療は出血のリスクを高める可能性がある。in vitro研究、薬理-疫学的研究の組合せは、薬物 - 薬物相互作用の評価に有用なパラダイムであり得る。

【コメント】
クロピドグレルの代謝経路は主に2つあり、添付文書には以下のような記載があります。
「クロピドグレル硫酸塩は吸収された後、肝臓で主に2つの経路で代謝される。すなわち、1)エステラーゼにより非活性代謝物であるSR26334(主代謝物)を生成する経路と、2)薬物代謝酵素チトクロームP450CYP)による酸化型代謝物を生成する経路である。後者の経路を経由して、活性代謝物H4が生成される」

エステラーゼで代謝される経路はクロピドグレル不活化の経路でこちらは主代謝物です。薬理活性を有する経路はCYPが絡んでおり、薬物相互作用や遺伝多形などこちらが注目されることの方が多い印象です。


カルボキシエステラーゼ1はデラプリルとイミダプリルなどのACE阻害薬の基質と言われており、ACE阻害薬はカルボキシエステラーゼにより活性代謝物となります。
Hydrolytic profile for ester- or amide-linkage by carboxylesterases pI 5.3 and 4.5 from human liver. Biol Pharm Bull. 1997 Aug;20(8):869-73. PMID: 9300133
エナラプリルのインタビューフォームを見てみると確か「にヒトにおける主要代謝物は活性代謝物であるジアシド体(エナラプリラト)である。」と書いてあり、構造中央あたりのエステルが加水分解されカルボキシル基になっています。投与された薬剤の70%が代謝されるようです。

今回問題となっているのが、ACE阻害薬とクロピドグレルとの代謝酵素競合阻害による薬物相互作用です。すなわちクロピドグレル主代謝物である非活性物質の経路が競合阻害により遮断され、活性物質が増加することによる出血リスク増大です。

基礎研究の結果では、トランドラプリル及びエナラプリルは、クロピドグレル活性代謝物の生成を増加させたことを明らかにしたうえで、臨床試験データを検討しています。ACE阻害薬の使用なしに比べてACE阻害薬を使用した患者の出血リスクは
①クロピドグレルの併用がある場合1.10 (95%信頼区間 0.97-1.25, P=0.124)
②クロピドグレルの併用がない場合0.90 (95%信頼区間 0.81-0.99, P=0.025)
と言う結果で①と②は統計的に有意な差が有ったとしています。(P=0.002

この研究結果のみで関連の強さを考察できるものではありませんが、因果関係を推論するうえで基礎研究結果と臨床研究結果の方向性一致は関連性の検討材料としては強いものになります。実臨床においてどの程度のインパクトとなるのか、今後の研究に注目するとともに、他の併用薬や投与量など、状況次第では両剤の併用には一定の注意喚起が必要かもしれません。

2014年9月17日水曜日

平成26年度第6回薬剤師のジャーナルクラブの開催のお知らせ

ツイキャス配信日時:平成26105日(日曜日)
■午後2045分頃 仮配信
■午後2100分頃 本配信
なお配信時間は90分を予定しております。

※フェイスブックはこちらから→薬剤師のジャーナルクラブFaceBookページ
※ツイキャス配信はこちらから→http://twitcasting.tv/89089314
※ツイッター公式ハッシュタグは #JJCLIP です。
ツイキャス司会進行は、精神科薬剤師くわばらひでのり@89089314先生です!
ご不明な点は薬剤師のジャーナルクラブフェイスブックページから、又はツイッターアカウント@syuichiaoまでご連絡下さい。

[症例13:アジスロマイシンの副作用リスクはどのくらい?]

[仮想症例シナリオ]
あなたは保険薬局の薬剤師です。最近、季節の変わり目のせいか、上気道炎の患者さんが増えており、抗生剤が良く処方されるようになりました。本日はアジスロマイシンが良く処方されていたためか、調剤室内はその空き箱と添付文書で散乱しています…。
あなたは何気なくアジスロマイシン成人用ドライシロップの添付文書を眺めていると、普段はあまり気にしたことの無いような副作用に目が留まります。

(重大な副作用)
QT延長、心室性頻脈(Torsades de pointesを含む)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。なお、QT延長等の心疾患のある患者には特に注意すること。”

でもこれって実際どの程度注意すればよいのでしょうか。。。Torsades de pointesは時に突然死を引き起こす重大な副作用です。
「成人にアジスロマイシンを投与すると、投与しない場合に比べて不整脈リスクや死亡リスクはどうなるか?」
JJCLIPを聞いて一通りEBM実践の基本スキルを身に着けていたあなたはこの臨床疑問を定式化し、文献を検索してみることにしました。
キーワードは アジスロマイシン;Azithromycinと不整脈;arrhythmia
検索データベースはPubMed Clinical Queriesを使います。
検索ワードを入れて、カテゴリーをEtiology、検索範囲をNarrowにすると、なんと文献が11件に絞られました(2014年9月現在)
その中でもフリーで全文が読める以下の論文を見てみることにしました。

[文献タイトル・出典]
Azithromycin and levofloxacin use and increased risk of cardiac arrhythmia and death.

[薬剤と有害事象との関連を評価するには]
今までJJCLIPで取り上げてきた論文は主にランダム化比較試験とそのメタ分析でした。(一部横断研究も取り扱いました)今回はいわゆる観察研究の論文です。(観察研究に対してランダム化比較試験は介入研究などとも呼ばれます)

ランダム化比較試験も疫学的研究方法の一つで、薬剤とそのアウトカムの関連を検討するものとして内的妥当性に優れた研究デザインでした。しかしながら今回の仮想症例シナリオのように「有害事象」をアウトカムにおいたランダム化比較試験は、倫理的に難しいと言えます。害が発生する可能性があることを知ってその評価のために薬を飲みたい研究参加者はいくら謝礼をもらったからとはいえ、そうそう集まるものではありません
また、医薬品の有害事象はそうそうめったに発生するものではありません。(そうであれば医薬品として承認されませんよね)めったに起こらないアウトカムを検討する場合、少ない症例数では検出力が不足し、結果に有意差が出ないことは想像につきます。
有害事象の検出にはRule of Threeと言うのがありまして、これを覚えておくと、なかなか便利です。この法則は
「有害事象発生率が1,000例中の1例の発現率(0.1%の発現率)である場合、その有害事象を95%の精度で検出する場合に、3倍の症例数が必要だ」
という法則です。例えば、10,000例に1例なら30,000例、50,000に1例なら150,000例が必要となることになります。
以上のような理由から有害事象と薬剤の関連を検討するにはランダム化比較試験のような介入研究ではなかなか難しいということがお分かりいただけるでしょう。この関連を検討するには、より倫理的で、より大規模な症例を集める、この2つの問題をクリアしなければいけません。
倫理的問題をクリアするには、ランダム化を行わないことです。人為的な介入をせず、自然の成り行きを見ていくという過程の中で薬剤と有害事象との関連を見出すのです。(=観察研究)そして、健康保険などの全国規模のデータベースを活用することでランダム化比較試験とは比べ物にならない大きな症例数を検討することが可能になります。

アメリカではメディケアやメディケイドと言った健康保険システムがありますが、これらのデータベースを用いることで、薬剤使用と疾患・有害事象の関連を評価することができます。
▶メディケア:65歳以上の高齢者を対象とした医療扶助。連邦政府によって運営
▶メディケイド:生活保護受給者など低所得者を対象とした医療扶助。連邦政府、州政府が共同運営

[観察研究を読む]
薬剤有害事象を検討するのに有用な研究手法の代表がコホート研究と症例対照研究です。今回はそのうちコホート研究を取り上げていきますが、症例対照研究との対比も含めてここで簡単に解説しておきます。

①コホート研究
コホートとは一定期間にわたって追跡される人々、さしあたってはそのような理解で良いと思います。コホート研究は観察対象集団の疾病の自然史に沿って観察を行う方法であり、人為的に暴露有り、無しにわけ、介入していくランダム化比較試験と異なります。しかしながら異なるのはここだけで、基本的にはランダム化比較試験と同じようにアウトカムの発症を前向きに検討しているという点では同様の認識で問題ありません。要するにランダム化して、人為的に治療するしないを分けるのがランダム化比較試験、ランダム化せず、自然の成り行きを観察していくのがコホート研究、どちらもアウトカムの発生率を暴露あり、なしと比較するため結果は相対指標(ハザード比などの相対リスク)で示すことが可能です

コホート研究の肝は暴露⇒疾患発生であり、観察の方向性は前向きです。たとえ後ろ向きコホートと言われるような研究でも、過去のデータから前向きに観察し、アウトカム発症を検討するため時間の流れは順行です。(後ろ向きコホート研究というネーミングがナンセンスです)

コホート研究の利点は暴露の有無から観察が始まるために暴露情報に関する妥当性の高さにあります。しかしながら、稀な疾患に対しては膨大な症例数と膨大な時間がかかるため事実上検討が難しい側面もあります。また慢性疾患など時間経過が長いものは途中で追跡不能例が出るなと、疾患発生情報の妥当性維持は困難と言えます。後ろ向きコホート研究では過去の資料を基に暴露情報を得るため、コホート研究のメリットである暴露情報の高い妥当性という面を失っている点にも注意が必要です。(したがって本来コホート研究は前向きコホート研究でこそ持ち味が発揮されると僕は考えていますが、コストや時間の面で効率が非常に優れた後ろ向きコホート研究は非常によく用いられる手法ではあります)

②症例対照研究
ケースコントロール研究とも言います。この研究の肝は以下の流れを把握するということ1点のみ。
①評価したいアウトカム(有害事象や疾患)を有する患者をまず集めてくる。=症例
②比較するための、アウトカムを有しない患者を集めてくる=対象
③症例と対照の各群が暴露の有無がどれほどだったか過去にさかのぼり調査
④得られた暴露の有無の情報から、疾患と暴露の関連性をオッズ比で示す

観察はまず、症例群と対照群の設定から始まるといことがこの研究方法の全てと言って過言ではないでしょう。ランダム化比較試験やコホート研究と全く異なるのがこの1点です。
そして各群の患者情報をもとに過去にさかのぼって暴露があるのかないのか調査します。したがって観察の向きは後ろ向き、疾患発生⇒暴露であり、時間の流れは逆行です。
ちなみに暴露割合を比較するため、ハザード比等のアウトカム発生率の相対指標を算出できません。代わりの相対指標としてこの研究ではオッズ比で示されます。
症例と対象はめちゃくちゃに選ばれるわけではありません。通常、同じ年齢、同じ性別の人を選んできます。これをマッチングと言います。

症例対照研究の利点はまず、低コスト、短時間での研究が可能なことに加え、疾患情報の妥当性に優れており(当たり前ですよね、すでに疾患が発生している人を「症例」として選んでいるわけですから)稀な疾患に対しても研究が行えるという点です。ただ暴露情報に関しては過去の資料を参照するためにその妥当性には欠けてしまいます。また相対指標はオッズ比で示されるため、リスク指標ではないことに注意が必要です。あくまで関連の強さを検討するということになります。

[交絡とは]
ランダム化比較試験において、2群間の背景因子を偏りなくそろえフェアな比較を可能にするがためのランダム化でした。観察研究ではランダム化ができません。そのためE群とC群の2群間に患者背景の偏りが生じてしまうのです。例えば年齢、性別だけではなく糖尿病や高血圧などの疾患保有割合、喫煙の有無、アルコール消費量、薬剤の使用などは、検討しようとしている疾患発生、あるいは有害事象等のアウトカムに影響を及ぼしかねません。交絡とはこのような暴露と疾病発生の関係の観察に影響を与え、真の関係とは異なった観察結果をもたらす、第3の因子と言えます。

例えば、ライターを所持している人は肺癌が多いという観察データがあったとして、ライター所持が肺癌の因果関係と言えるでしょうか。ライターを所持している人は喫煙者であることが多い、そのため喫煙が肺癌と関連しているのですが、見かけ上ライター所持が肺癌リスクを上昇させるのです。この場合ライターが交絡因子ということになります。

[外的妥当性と内的妥当性]
観察研究では交絡因子の影響をできる限り排除するため、統計解析において補正をかけるのが常です。論文には調整された交絡因子が結果の表の下などに列挙されていることが多いので、必ずチェックするようにします。ただ、調整できるのはあくまで既知の交絡因子のみであり、未知の交絡因子までは補正できません。その点ランダム化比較試験は未知の交絡因子まで均等に振り分けてしまうので、研究の「内的妥当性」に優れるなどと言われるのです。しかしながら、理想的な環境下、言い換えれば実験室での結果はしばしば現実世界とギャップがあります。その点観察研究は、人が実生活の中での自然史を観察していくので「外的妥当性」に優れているという面があります。

ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究、いずれが劣るとも勝るとも僕は言えないと思います。各研究の長所と利点を熟知したうえで、その結果を使いこなすということの方が重要です。

[観察研究を10分で読むワークシート]
以下にワークシートを作成しましたのでご活用ください。




薬剤師のジャーナルクラブ(Japanese Journal Club for Clinical Pharmacists:JJCLIPは臨床医学論文と薬剤師の日常業務をつなぐための架け橋として、日本病院薬剤師会精神科薬物療法専門薬剤師の@89089314先生、臨床における薬局と薬剤師の在り方を模索する薬局薬剤師 @pharmasahiro先生、そしてわたくし@syuichiao中心としたEBMワークショップをSNS上でシミュレートした情報共有コミュニティーです。

2014年9月4日木曜日

Proportional Reporting Ratios(PRR)について

薬品の市販後の有害事象報告に関する自発報告は本邦でも増加しているようです。このような自発報告からの医薬品有害事象シグナル検出という手法が薬剤と有害事象関連評価に用いられています。シグナルとは「今まで知られていなかった、あるいは根拠が不十分であった有害事象と医薬品の因果関係の可能性に関する情報」と定義されています。

シグナル検出は日本では日常的に使用されていませんが、海外では実利用されており、実際に論文も出ています。

Prescription drugs associated with reports of violence towards others.

この研究はFDAに報告された有害事象レポートを用いて薬剤と暴力的行動に関する有害事象との関連性をシグナル検出という方法で検討したものです。アウトカムはProportional Reporting RatioPRR)で示されています。このPRRとはいったいなんなのか、個人的に疫学的なリスク指標としてはなじみが薄い印象でした。


注目している
医薬品
注目している医薬品以外の全医薬品
合計
注目している有害事象
a

b
e
注目している有害事象
以外の全有害事象
c
d
f
全有害事象

g
h
n

上の表においてPRRとは以下のように定義されています。

PRR=(a/g)/(b/h)

すなわち注目していいる医薬品の全有害事象にしめる注目している医薬品の有害事象割合と注目している医薬品以外の全医薬品の全有害事象に占める注目している医薬品以外の注目している有害事象との比で示されます。(長い…)

[リファンピシンのブドウ膜炎を例に]

リファンピシン
リファンピシン以外の全医薬品
合計
ブドウ膜炎
41

754
795
ブドウ膜炎以外
の全有害事象
全有害事象

55
592712
592767

RRR=(41/55/754/592712)=586
英国Medicines and Healthcare Products Regulatory AgencyMHRA)ではこのPRR値と同時にχ2値も算出します。

χ2n(|ad-bc|-n/2)2/(efgh)


MHRAではシグナル検出のカットオフ値をPRR>2、χ2値>4、報告数>2を基準としているそうで、未知の有害事象においてはこれら3条件が満たされればシグナルとして分析を開始するそうです。このような自発報告からのシグナル検出は有害事象の存在可能性を推測するものであり、直接因果関係を示しているわけではありません。しかしながら未知の有害事象探索において、その存在可能性を迅速に検出するための方法論として今後の動向に注目です。

2014年9月3日水曜日

デング熱のこと

国内でのデングウイルス感染例がマスコミでも連日報道され、話題となっておりますが、デング熱とその周辺について少しまとめてみました。

[デングウイルス]
デング熱はネッタイシマカやヒトスジシマカによって媒介されるデングウイルスによる感染症です。デングウイルスは日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルス科に属し、4種の血清型が存在すると言われています。予後良好と言われるデング熱と、より重症型のデング出血熱やデングショック症候群の2つの病態に分けられます。日本では毎年 3070 名程度のデング熱の報告があると言われています。(参考)国立感染症研究所 感染症情報センター疾患別情報
デングウイルスの血清型は1型~4型までの4種類あり、1型に関しては終生免疫を獲得すると言われていますが、他の血清型に対する交叉防御免疫は数ヶ月で消失してしまい、その後は他の型に感染しうるといわれています。この再感染時にデング出血熱になる確率が高くなるそうです。デングウイルスはヒト→蚊→ヒトの感染環を形成しており、日本脳炎ウイルスにおけるブタのような増幅動物は存在しません。またヒトからヒトに直接感染することはありません。

[デング熱]
感染37日の潜伏を経て突然の発熱で始まり、頭痛特に眼窩痛・筋肉痛・関節痛を伴うことが多く、食欲不振、腹痛、便秘を伴うこともあるようです。発熱のパターンは二相性になることが多いと言われています。発症後、34日後より胸部・体幹から始まる発疹が出現し、四肢・顔面へ広がることもあります。これらの症状は1週間程度で消失し、通常、後遺症なく回復すると言われています。

[デング出血熱]
デングウイルス感染後、デング熱とほぼ同様に発症して経過した患者の一部において、突然に、血漿漏出と出血傾向を呈することがあり、これはデング出血熱と呼ばれます。重篤な症状は、発熱が終わり平熱に戻りかけたときに起こることが特徴的であるとされています。
 患者は不安・興奮状態となり、発汗がみられ、四肢は冷たくなり、胸水や腹水が極めて高率に発現します。また、肝臓の腫脹、補体の活性化、血小板減少、血液凝固時間延長がみられ、多くの例で細かい点状出血が現れます。さらに1020%の例で鼻出血・消化管出血などをみとめます。デング出血熱は、適切な治療が行われないと死に至る疾患です。致死率は国により、数 パーセントから1パーセント以下となっているようです。(参考)感染症情報センター:感染症の話 デング熱

[治療]
デング熱及びデング出血熱に対する特別な治療法はありません。症状に応じた対症療法が行われます。デング出血熱に対する血小板輸血の効果はよく分かっていません。

Effectiveness of platelet transfusion in dengue Fever: a randomized controlled trial.

また鎮痛解熱剤としては、サルチル酸系のものは出血傾向やアシドーシスを助長することから使用すべきではないと言われており、アセトアミノフェンが推奨されています。
デング関連のショック状態へのステロイド投与や重症者への早期ステロイド投与の効果もよく分かっていません。

Corticosteroids for dengue infection.

Effects of short-course oral corticosteroid therapy in early dengue infection in Vietnamese patients: a randomized, placebo-controlled trial.

[実際の症例]
本邦における、より重症型であるデング出血熱の具体的な症例報告を見ています。

①モルディブより帰国後デング出血熱を発症した1

患者背景
16歳男性。副鼻腔炎の既往。1週間前にモルディブへ渡航
症状
帰国後7日目より38.4℃ の発熱,悪寒,頭痛,関節痛,腹痛が出現。近医を受診し感冒薬と抗菌薬を処方された.翌日から水様便が出現し,発熱が持続。入院 2 日目,四肢末梢を中心に小丘疹および点状出血が現れ,APTT 92.6secPlt 4.4 万μlと凝固能異常および血小板減少の増悪を認めた.
体温 41.9℃まで上昇し意味不明の発言を認めた.
理学所見
体温 39.2℃,血圧 100/50mmHg,脈拍 62分,呼吸 18分,眼球結膜充血あり,項部硬直なし。皮疹なし。
治療
デング熱診断後は補液などの対処療法。入院 7 日目に退院

②ブラジル旅行後に発症したデング出血熱の1
患者背景
27歳女性。200221日から214日 までブラジル旅行
症状
日本に帰国後218日 より頭痛,関節痛,筋肉痛を伴う39度 台の発熱が出現。頸部リンパ節腫脹認め,四肢点状出血認めた
理学所見
身 長156cm,体 重48.Okg,体 温37.7,血 圧90/54mmHg,脈 拍96/分 整。白血球2.100/μl,血小板5.6×104/μ1と著明な低 下
治療
入院後十分な補液のみで経過を観察した.入院第3病日に血 液検査上白血球1,500/,血小板4.2×104/μlとさらに低下し,十 分な補液にもかかわらず,ヘマトクリットは45.1%と入院時に比 べ若干上昇した.しかし,翌第4病日に解熱し,頭痛などの自覚症 状も改善した.その後,8病日に点状出血は改善傾向を認め,血 液検査上白血球,血小板も改善傾向にあり同日退院 した.

[予防]
現在、予防接種は開発段階です。

Protective efficacy of the recombinant, live-attenuated, CYD tetravalent dengue vaccine in Thai schoolchildren: a randomised, controlled phase 2b trial.

Clinical efficacy and safety of a novel tetravalent dengue vaccine in healthy children in Asia: a phase 3, randomised, observer-masked, placebo-controlled trial.

現段階での有効率は30%~55%前後と言う感じでしょうか。いまいち、な印象ですが、今後の報告に注目です。ワクチンによる予防が現段階で期待できないとなると、ヒトーヒト感染しないデングウイルスに対しては蚊との接触を防ぐ物理的な防護しか手法はありません。厚生労働省:デング熱に関するQ&Aには「ヒトスジシマカやネッタイシマカは日中に活動し、ヤブや木陰などでよく刺されます。その時間帯に屋外で活動する場合は、長袖・長ズボンの着用に留意し、忌避剤の使用も推奨します。」と記載されています。忌避剤とはすなわち虫よけ剤のことです。

[虫よけ剤DEETの有効性]
本邦で使用可能な虫よけ剤は、その主成分のほとんどがN, N -diethyl-3-methyl-benzamide、通称DEETと呼ばれる物質です。昆虫がこれを嫌うメカニズムは実はよく分かっていないそうですが、CDCのサイトには蚊、ダニ、その他の昆虫節足動物に対する保護として虫よけ剤も一般的な対応として記載がされています。CDCでは20%以上のDEETを含有した虫よけ剤を推奨していますが、本邦で入手できる最大濃度は12までのようです。DEETの濃度は効果持続時間と関連してくるようです。

DEET濃度
持続時間
30
6時間
10
3時間

かなり製品によりばらつきがあるようですが、DEET濃度は50%を超えてもその有効性にあまり差が無く、概ね10時間、30%前後であれば6時間から8時間、20%以下では3時間程度と言う感じでしょうか。(参考:米国環境保護庁Insect Repellents: Use and Effectiveness12%であれば理論的には3時間もたない可能性は高いです。

[虫よけ剤DEETの安全性]
DEETの安全性有効性に関しては「厚生労働省:ディート(忌避剤)の安全性について」の末尾にエビデンスがまとまっています。
妊娠女性において、DEETは妊娠後期であれば、比較的安全に使用できると言います。

Safety of the insect repellent N,N-diethyl-M-toluamide (DEET) in pregnancy.

安全性は高いですが、もちろん大量に意図的に摂取すれば毒性もあります。40%DEETを6オンス(約170ml)摂取し心肺止をおこした症例報告があります。

A Lethal Case of DEET Toxicity Due to Intentional Ingestion.

なお本邦では6カ月未満の乳児にはDEETを含有した虫よけ剤は使用できません。

[(参考)マラリアに対するDEETの効果]
デング熱予防に対するDEETの効果については現時点で文献見つけることができませんでした。(知っている方がおられましたら是非ご教授ください)しかしながら同じく蚊により媒介される感染症であるマラリアに対するDEETの予防効果を検討した研究がありました。

Can topical insect repellents reduce malaria? A cluster-randomised controlled trial of the insect repellent N,N-diethyl-m-toluamide (DEET) in Lao PDR.

現在の一般的なマラリア予防の取り組みは殺虫剤処理した防虫ネットと室内に残留するタイプの殺虫スプレーが使用されているそうです。殺虫剤処理した防虫ネットは現段階でのベストプラクティスと言われており、夜間の虫刺さされから防護するのに効果的であると言われています。しかしながら、ベクターとなる蚊は屋外あるいは早朝に活動することが多く、その有用性はそのような状況では減弱します。したがって屋外における防御のための介入方法に注目が集まっています。
虫よけ剤であるDEETは屋外における蚊との接触機会を減少させることが期待されています。タイやマレーシアにおける実地試験ではDEET15%~20%で約4時間から6時間の間に蚊に刺されるリスクが少なくとも65%以上、83%~100%も減少したとしています。
J Am Mosq Control Assoc. 2000 Sep;16(3):241-4.
Med Vet Entomol. 1998 Jul;12(3):295-301

ではこの研究を少しご紹介いたします。
[Patient]
南部ラオスにおける1,597世帯(6歳から60歳、年齢中央値19歳、7,980人、世帯人数中央値5人、女性55%)
[Exposure]
殺虫剤処理した防虫ネット+DEET15%ローション795世帯3972
[Comparison]
殺虫剤処理した防虫ネット+プラセボローション4008
Outcome
迅速診断キットによる三日熱マラリア、熱帯熱マラリアの発症
研究デザイン
家族単位のクラスターランダム化比較試験
ランダム化さているか?
されている(household randomised
盲検化されているか?
double blind Participants, field staff and data analysts were blinded to the group assignment
サンプルサイズは十分か?
脱落を考慮してパワー90%、α0.05で各群800世帯
ランダム化は最終解析
まで保持されているか?
Intention to treat analysis
1398世帯/1597世帯
コンプライアンス:自己申告で平均60
追跡期間は?
平均6.4ヵ月

結果は以下のようになっています。
アウトカム
DEET
プラセボ
ハザード比
[95%信頼区間]
三日熱マラリア、
熱帯熱マラリアの発症
45/3947
42/3961
1.00
[0.9891.014]
熱帯熱マラリア
35/3947
33 /3961
1.00
[0.9891.02]
三日熱マラリア原虫
14/3947
16/3961
1.00
[0.9791.02]

クラスターランダム化にした理由として、偶発的な家族内での使用薬剤取り間違えへの配慮と記載があります。また塗布部位から1メートルは薬剤の影響下にあり、同世帯感での介入効果の混同を避けるためでもあるようです。検出力不足もあるのでしょうか、結果的には効果不明ということになってしまいました。

[まとめ]
ウイルスを媒介するヒトスジシマカは、日本のほとんどの地域に分布していますが、その活動時期は5月中旬~10月下旬と言われています。ヒトスジシマカの幼虫は、ベランダにある植木鉢の受け皿や空き缶・ペットボトルに溜まった水、放置されたブルーシートや古タイヤに溜まった水などによく発生すると言われています。したがってそのような環境を身近に作らないことも感染対策上重要かと思います。
ヒトスジシマカは卵で越冬します(卵越冬)が、その卵を通じてデングウイルスが次世代の蚊に伝播した報告は国内外でないと言われています。季節的観点からいえば理論的には現在の感染動向は減少に転ずるはずではあります。
デング熱は一般的に予後良好ですが、現時点で有効なワクチンはありませんし、治療は輸液など対処療法のみです。血小板輸血やステロイドの有効性は確立していません。12%DEETを配合した虫よけスプレーによる感染予防効果も今のところ不明です。(感染リスク低減には20%~30%のDEET濃度が必要と言われています。[参考]CDC:DengueFrequently Asked Questions
基本的な対策としてはやはり、蚊によって媒介されるウイルスであるとこを踏まえ、蚊が多く生息していそうな場所を避ける、蚊が存在するような場所では、長そで長ズボンで防護、等の対応をとるよりほかありません。[参考]CDC:How to reduce your risk of dengue infection:

DEET12%の虫よけ剤はデング熱予防効果は不明ですが、使用するとしても、3時間以上効果が持続する可能性は低く、長期屋外に滞在する場合は、こまめに塗布する必要があります。