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2014年4月22日火曜日

SGLT2阻害薬の考え方使い方


今後販売ラッシュが予想されるSGLT阻害薬。現時点での情報に基づきまとめます。

[申請された主なSGLT2阻害薬一覧]
一般名
商品名
常用量(詳細添付文書確認)
イプラグリフロジン
スーグラ
1150mg
ダパグリフロジン
フォシーガ
115mg
ルセオグリフロジン
ルセフィ
112.5mg
トホグリフエロジン
アプルウェイ/デベルザ
1120mg
カナグリフロジン
エンパグリフロジン

[作用機序]
腎臓におけるグルコースの再吸収を抑制し、尿中にグルコースを排泄し、血糖値を下げる。ナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT2というタンパク質を阻害することで、本来再吸収されるはずのグルコースを尿中にそのまま排泄させる作用を持つ。したがって当該薬剤服用中は尿中に尿糖が検出される。(尿検査注意)

[有効性・安全性]
■インスリン非依存的に血糖値を下げるため、膵臓β細胞に負担をかけないと考えられている。現在、すべての経口糖尿病薬と併用が可能である。

45のランダム化比較試験を統合したメタ分析で、代用のアウトカムに関する有効性と有害事象が報告されている。
Sodium-glucose cotransporter 2 inhibitors for type 2 diabetes : s systematic review and meta-analysis .Ann Inten Med 2013 Aug 20;159(4):262-74 PMID:24026259
    HbA1cはプラセボに比べて減少する
平均差は-0.66% [95% 信頼区間, -0.73% to -0.58%]
    尿糖排泄のためプラセボに比べて体重減少効果が示唆されている。
平均差は, -1.80 kg [95%信頼区間, -3.50 to -0.11 kg]
    利尿作用のためプラセボに比べて血圧減少効果が示唆されている
収縮期圧の平均差は, -4.45 mm Hg [95%信頼区間, -5.73 to -3.18 mm Hg]
    プラセボと比べて尿路感染症リスクと有意に関連している
オッズ比1.42 [95%信頼区間, 1.06 to 1.90]
    プラセボと比べて生殖器感染症リスクと有意に関連している
オッズ比5.06 [95%信頼区間, 3.44 to 7.45]
    重篤な低血糖は既存の薬剤と同程度である
    心血管疾患合併症抑制効果、総死亡抑制効果に決定的な有効性は認められない
    膀胱癌、乳癌リスク上昇が示唆される(添付文書にも記載あり)

ダパグリフロジンの国内第3相比較試験の結果によれば、ベースラインHbA1cの値により、薬剤のHbA1c低下効果に差があることが示されており、ベースラインHbAcが高いほど、HbA1c低下効果が強くなると考えられている。逆にベースラインでのHbAcが低いとその低下効果も弱い。

本邦未発売のカナグリフロジンにおいて基礎インスリン療法に加えて、canagliflozin 300mg/日の投与を開始された脳卒中リスク因子を複数持つ62歳女性が開始後15日で失語を発症した症例報告がある。
Cerebrovascular Accident in a High-Risk Patient During the Early Initiation Phase With Canagliflozin.Ann Pharmacother. 2014 Apr 16. [Epub ahead of print] PMID: 24740468
画像検査により左大脳基底核、側頭、頭頂葉の急性梗塞を認めたとしており、薬剤との因果関係が指摘されている。

[薬物動態・相互作用に関する留意点]
    SGLT2阻害薬は利尿作用が有るため利尿剤との併用に注意する。
    中等度以上の腎機能障害のある患者では血糖低下作用が十分に得られない。
[参考]以下トホグリフエロジンの製品情報より
・投与しない・
●重度の腎機能障害のある患者さん(目安 : eGFR < 30mL/min/1.73m2
●透析中の末期腎不全患者
・投与の必要性を慎重に判断・
●中等度の腎機能障害のある患者さん
  (目安:60mL/min/1.73m2 > eGFR > 30 mL/min/1.73m2

[現段階でのSGLT2阻害薬の考え方使い方]

    現段階で糖尿病合併症や死亡リスクを低下させることは証明されていない。
    利尿作用を有することから、夜間頻尿を有する高齢者では骨折リスクに留意すべきである。
    特に女性では尿路感染症リスクがより高まるものと考えられる。
    インスリンを使用しており、脳卒中リスク因子を有するハイリスクな糖尿病患者での使用で薬剤との因果関係が否定できない急性脳梗塞を発症した症例が報告されており、このような患者への投与は避けるべきである。
    利尿剤との併用に注意し、特に夏場などは脱水に注意し、口渇などの症状を見逃さないよう留意する。
    現段階でHbAc低下効果等の代用のアウトカムしか改善することが示されていないことを踏まえると、1錠薬価が最大で200円近くする高価な薬剤を第一選択で用いることは推奨できない。特に高齢女性での使用は推奨できない。肥満症例でメトホルミンの容認性が悪く、HbAcがやや高い患者への検討が妥当と考えられる。

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