[お知らせ]


2013年2月15日金曜日

重症熱性血小板減少症候群とSFTSウイルスについて


(注意)現時点で入手できる情報が限られています。記事の内容に誤りなどありましたらご指摘ください。最新正確な情報につきましては厚生労働省HP重症熱性血小板減少症候群(SFTS)についてでご確認をお願いしています。

重症熱性血小板減少症候群(Severe fever with thrombocytopenia syndrome: SFTS)は発熱と血小板減少症に関連付けられている生命を脅かす疾患であり2011年に初めて同定されたSFTSウイルスが原因とされています。1)2)このウイルスはマダニというダニの一種であるフタトゲチマダニが媒介するといわれています。32009年に中国でこのウイルスによる重症熱性血小板減少症候群が発生したそうです。4本邦においても2012年に山口県において発症が確認されています。5)

SFTSウイルスを媒介するマダニ類は、 節足動物のクモ綱・ダニ目に属する吸血性の大型ダニで、通常は哺乳類・鳥類・爬虫類など野生の脊椎動物の体表に咬着寄生して吸血していますが稀にヒト皮膚にも咬着するといわれています。人体寄生症例は発生率は6月をピークに4〜9月に集中しているといわれ6)この時期は注意が必要です。

SFTSウイルスは、ブニヤウイルス科フレボウイルス属に属する、三分節1本鎖RNAを有するウイルスです。ブニヤウイルス科のウイルスは酸や熱に弱く、一般的な消毒剤(消毒用アルコールなど)や台所用洗剤、紫外線照射等で急速に失活します。2)

SFTSウイルスに感染すると6日から2週間ほどの潜伏期間を経て発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)が中心です。時に頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)、リンパ節腫脹、呼吸器症状(咳など)、出血症状(紫斑、下血)を起こすといわれています。2)致死率は約10%~30%といわれています。(中国において、2009年当初は報告例が少なく致死率30数%であったが、その後調査が進み、10数%となっている)

有効な抗ウイルス薬等の特異的な治療法はなく、対症療法が主体になります。中国では、リバビリンが使用されているようですが、明確なエビデンスは無いようです。

マダニからの幹線以外に患者血液との直接接触が原因と考えられるヒト-ヒト感染の事例も報告されていますので、接触予防策の遵守が重要です。飛沫感染や空気感染の報告はありませんので、飛沫予防策や空気予防策は必要ないと考えられています。2)7)

2013212日までに日本国内で確認された症例は、3件です。3名の患者はいずれも最近の海外渡航歴はありません。予防法としては以下の方法が愛媛県松山市のホームページで紹介されています。
「野外でマダニに咬まれないようにすることが重要です。マダニは、食品等に発生するコナダニや衣類や寝具に発生するヒョウダニなど、家庭内に生息するダニとでは種類が異なります。草むらや藪など、マダニが多く生息する場所に入る場合には、長袖、長ズボン、足を完全に覆う靴を着用し、肌の露出を少なくすることが大事です。また、屋外活動後はマダニに刺されていないか確認してください。」

現時点での対策・まとめとして
■野外でダニに咬まれないようにする。
■感染者の血液、体液、排泄物との直接接触を避ける。
■ワクチンは無く有効な治療法も確立していない

[引用文献]
1)N Engl J Med. 2011 Apr 21;364(16):1523-32
2)厚生労働省報道資料「重症熱性血小板減少症候群に関するQ&A
3)Bing Du Xue Bao. 2012 May;28(3):252-7.
4)Case Rep Infect Dis. 2011;2011:204056
5)厚生労働省報道資料「国内で初めて診断された重症熱性血小板減少症候群患者」
6)川崎医学会誌 38 3):1431502012
7)J Infect Dis. 2013 Mar;207(5):736-9

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