特定健診・特定保健指導Wikipediaから引用します。
「特定健診・特定保健指導とは、2008年4月より始まった
40歳~74歳までの公的医療保険加入者全員を対象とした保健制度である。
正式には「特定健康診査・特定保健指導」という。
一般には「メタボ健診」といわれており、健診の項目は
平成19年厚生労働省令第157号第1条に規定されている。」
■既往歴に関する問診
■自覚症状および他覚症状の検査■身長体重および腹囲検査
■BMI検査
■血圧測定
■血液検査(GOT、GPT、γGTP、中性脂肪、HDLコレステロール、血糖値、HbA1c)
■尿中の糖および蛋白の有無
このほか医師が必要と判断した場合には「心電図検査」「眼底検査」
「血液検査(ヘマトクリット値、血色素量、赤血球数)」の健診が追加されます。
「血液検査(ヘマトクリット値、血色素量、赤血球数)」の健診が追加されます。
上記の結果、腹囲が85cm以上(男性)、90cm以上(女性)の者、または腹囲が基準以下であっても
BMIが25以上の者のうち、血糖値(空腹時血糖が100mg/dL以上、HbA1cが5.2%以上)、脂質(中性脂肪150mg/dL以上、HDLコレステロール40mg/dL以下)、血圧(収縮期130mmHg、拡張期85mmHg以上)に該当する者が特定健診における「特定保健指導」の対象者となります。
BMIが25以上の者のうち、血糖値(空腹時血糖が100mg/dL以上、HbA1cが5.2%以上)、脂質(中性脂肪150mg/dL以上、HDLコレステロール40mg/dL以下)、血圧(収縮期130mmHg、拡張期85mmHg以上)に該当する者が特定健診における「特定保健指導」の対象者となります。
ちなみにBMIは以下の計算式で計算できます
BMI= 体重kg ÷ (身長m)2BMIが18.5未満:低体重、18.5~25:普通、25以上:肥満とされています
ここで、検査項目である、腹囲とBMIに焦点をあてて、その診断基準が妥当か
というのを、日本人を対象にした観察研究を見ながら考察したいと思います。
1)
腹囲と心血管リスクの関係
「Proposed Criteria for Metabolic Syndrome in Japanese Based on
Prospective Evidence」Stroke. 2009 Apr;40(4):1187-94では
40歳以上の日本人を対象にした、コホート研究(14年追跡)で
本邦におけるメタボ検診の腹囲に関する基準値において、その腹囲と
心血管疾患リスクは関連しない可能性があるという結果が示唆されています。
http://stroke.ahajournals.org/content/40/4/1187.long
現行基準の腹囲は男性85cm以上、女性90cm以上ですが、
この基準未満を1として心血管リスクの調整ハザードを算出すると、
男性Age-Adjusted HR 1.22 (0.86–1.73)
女性Age-Adjusted
HR 1.05 (0.68–1.62)
といずれも有意な差が出ません。
この報告では腹囲に関しては現行の基準値よりも、男性では90cmを境に、女性では80cmを境に基準を設定したほうが
CVDリスクをより反映するのではないかという結論です。
男性90cm未満、女性80cm未満を1として
同様に心血管リスクの調整ハザードは以下の通り男性Age-Adjusted HR 1.81 (1.19–2.74)
女性Age-Adjusted HR 1.46 (0.99–2.16)
むしろその基準が必要かどうかを議論すべきだと思います。
2)
BMIと死亡リスク
Body mass index and mortality from all causes and major
causes in Japanese: results of a pooled analysis of 7 large-scale cohort
studies.J Epidemiol. 2011 Nov 5;21(6):417-30. Epub 2011 Sep 10.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21908941
353422人の日本人(男性162 092人、女性191 330人)を対象に
BMI(body mass index)と死亡の関係を7つのコホート研究を
プールド解析した報告です。追跡期間は12.5年です。
男性のBIM23~25未満と比較した総死亡の関係のHR(95%信頼区間)は以下の通り
BMI14~19未満:adjHR 1.78(1.60-1.98)BMI19~21未満:adjHR 1.27(1.22-1.33)
BMI21~23未満:adjHR 1.11(1.04~1.18)
BMI23~25未満:1.00 (Reference)
BMI25~27未満:adjHR 0.94(0.90~0.99)
BMI27~30未満:adjHR 1.07(0.97~1.17)
BMI30~40未満:adjHR 1.36(1.19~1.55)
女性のBIM23~25未満と比較した総死亡の関係のHR(95%信頼区間)は以下の通り
BMI14~19未満:adjHR 1.61(1.53-1.71)
BMI19~21未満:adjHR 1.17(1.11-1.23)
BMI21~23未満:adjHR 1.03(0.98~1.09)
BMI23~25未満:1.00 (Reference)
BMI25~27未満:adjHR 1.04(0.98~1.10)
BMI27~30未満:adjHR 1.08(1.02~1.16)
BMI30~40未満:adjHR 1.37(1.24~1.50)
このようにBMIと死亡の関係は逆J字型グラフとなります。
低BMIでは死亡リスクが有意に高くBMI高値よりもむしろそのHRは高いことが示唆されています。BMI26では男性ではむしろ死亡リスク減少、女性でも有意な差はないという結果に
特定検診の診断基準を重ねると、その矛盾に疑問が生じるのもやむをえません。
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=56599
「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に注目した特定健診・保健指導(メタボ健診)の課題を議論してきた厚生労働省の検討会は28日、2013年度の制度見直しに反映する基本方針を了承した。 肥満でなくても、高血圧や高血糖などの危険因子を考慮して、新たに保健指導の対象とする。肥満の判定に用いる「男性85センチ、女性90センチ」の腹囲基準は、変更しない。肥満でない保健指導対象者を選ぶ新たな基準や、指導の具体的内容については今後、検討を進める。
現在は、腹囲が基準値以上で、しかも高血圧、高血糖、脂質異常の3危険因子のいずれかに該当すると、特定保健指導の対象となる。 この指導は、実際に効果を上げている。指導に熱心な岩手県一関市藤沢地域。トラック運転手の男性(60)は2年前、メタボと判定された。腹囲90・8センチ。保健センターの指導の結果、1年間で体重は6・5キロ、腹囲は9・7センチ減った。血糖値も大きく下がった。
国立保健医療科学院が、2008年度にメタボ健診を受けた8都道府県の国民健康保険加入者を調べたところ、指導を受けた人は1年間で体重が平均2キロ近く減り、血糖値や中性脂肪、血圧も改善した。」
引用終わり
厚生労働省の検討会では腹囲に関する基準の変更意思はないという。
また実際に効果をあげているという保健指導は血圧、血糖値、中性脂肪、体重など、
あくまで代用のアウトカムの改善です。
特定検診・特定保健指導の真のアウトカムの評価は現段階でエビデンスに乏しい
と言わざるをえません。
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