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2012年7月6日金曜日

スタチンとフィブラートの併用をあらためて考えてみる


スタチンとフィブラートの併用症例を検証したいと思います。
(以下は架空の症例です)
TGは200前後で糖尿病もなく、その他目立つ合併症もなし。
年齢も若く、低リスクな患者さんです。
通常は添付文書の「原則禁忌」を根拠に
疑義照会をかけることも多いと思いますが
ここで、あらためて併用について考えてみたいとおもいます。


対象患者が異なりますが、よりハイリスクな2型糖尿病患者に対する
シンバスタチン+フェノフィブラートの併用は、
シンバスタチン単剤の治療と比べて、
有効性・安全性に有意差がないという結果。
主要CVD初発HR 0.9295CI0.791.08
 (N Engl J Med. 2010; 362: 1563-74) 


そもそもフィブラート系薬剤というのはその真のアウトカムに
有効性がはっきり示されたエビデンスは少ないです。
フィブラートの効果を検討したメタ分析では
総死亡,心臓死,心血管死,突然死,非血管死,脳卒中,心不全は減らせず。
 (Lancet 2010;375:1875-1884)


スタチンとフィブラートは横紋筋融解症リスクのため原則禁忌と
添付文書に記載があります。
横紋筋融解症をCK基準値上限の10倍以上と定義した場合、
スタチン単独で0.44 (0.20-0.84)1万人年に対し
併用で、5.98 (95% CI, 0.72-216.0) 1万人年。
10倍以上リスク増加と言えましょう。
 (JAMA. 2004;292(21):2585-2590


ここでもう少しフェノフィブラートの臨床効果を見てみたいと思います。
ハイリスクな患者(2型糖尿病)の心血管イベントを抑制できるか、というRCTでは
冠動脈イベント(CHD死+非致死的心筋梗塞)
HR0.89, 95%CI 0.751.05, p0.16とやはり微妙。
さらに死亡率HR 1.1195%CI  0.95-1.29)増加傾向という結果。
 (Lancet. 2005; 366: 1849-61) 

BMJ 1993;306:1367という少々古いメタ分析によれば
冠動脈死亡低リスク患者に脂質低下療法を行うと死亡増加が示されています。
今回の症例のように糖尿病ではない患者にフェノフィブラート投与はどうなのでしょう。


以上をまとまると
スタチン療法にフィブラートの追加投与のベネフィット微妙。
(N Engl J Med. 2010; 362: 1563)(Lancet 2010;375:1875
横紋筋融解症リスクが増加(JAMA. 2004;292(21):2585-2590
さらに併用することで、死亡リスク増加の可能性
BMJ 1993;306:1367)(Lancet. 2005; 366: 1849-61

どうでしょう。少しこじつけかもしれませんが、
「害」は多めに見積もるということで、合併症のない低リスク患者では
“原則禁忌”という根拠以上に危険な併用であることが見えてきませんか?

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