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2012年7月12日木曜日

ACE阻害薬またはARBは肺炎を予防できますか?

ACE阻害薬とARBの肺炎発症リスクを検討したメタ分析が
BMJ誌から報告されています。

Risk of pneumonia associated with use of angiotensin converting enzyme inhibitors and angiotensin receptor blockers: systematic review and meta-analysis
BMJ 2012; 345 doi: 10.1136/bmj.e4260

アンギオテンシン転換酵素阻害薬とアンギオテンシン受容体拮抗薬の使用
で肺炎リスクを評価する縦断的研究37研究をシステマテックレビュー・メタ分析で検証

P37研究の患者データ
EACEI及びARBの投与は
C:介入なしとくらべて
O:肺炎発症リスクはどうなるか?
■主要評価項目:肺炎の発症  ■副次評価項目:肺炎死亡
■評価者バイアス:2名の評価者が独立してデータを抽出
■元論文バイアス:観察研究も含むがRCTも解析しており妥当性はまずまず。
■異質性バイアス:結果の末尾にI2を標記しました。
■出版バイアス  :MEDLINE以外にもFDAWEB上の情報を検索。
エビデンスレベル ☆☆☆☆
【エビデンスレベルについて】
当ブログでは、エビデンスの妥当性をすぐに確認できるよう
暫定的にエビデンスレベルを以下のように表示しています。
☆☆☆☆   質の高いメタ分析
☆☆☆     質の高いRCT
☆☆      質の低いRCT、質の低いメタ分析
☆        観察研究
注意:エビデンスの批判的吟味を詳細に行っているわけではありませんので
あくまで参考程度にご利用下さい。

コントロール群と比較してACE阻害剤服用群では肺炎リスク減少
*全体19研究     OR 0.66(0.55 - 0.80 I2=79%
RCTのみ5研究  :OR 0.69(0.56-0.85)   I2=0%
コントロール群と比較してARB服用群では肺炎リスク減少に関連せず。
*全体12研究      :OR 0.95(0.87-1.04)  I2=14
RCTのみ9研究   OR 0.90(0.79-1.01)  I2=7
ACEIの使用はサブ解析で脳卒中患者、心不全患者、アジア人で有意に肺炎リスク低下

肺炎死亡はACEIの使用で減少
 OR0.730.57-0.94) I2=50%
ただし、3RCTの統合解析で有意差がでず。観察研究のみで有意に減少

肺炎死亡はARBの使用では減少しない可能性がある
OR 0.63 (0.40-1.00)

ACE阻害剤非服用者ではACE阻害剤服用者に比べて
肺炎罹患リスクが増加することが知られています。Lancet 1998; 352: 1069
高齢者では誤嚥性肺炎リスクが高く、肺炎は死亡原因の一つです。

今回のメタ分析ではACE阻害剤の使用で肺炎発症リスクが低下するというものです。
主要評価項目全体としては異質性が高いようですが、
RCTに限定してもリスクは減っているようです。

肺炎による死亡抑制効果は、RCTに限定すると有意な差はつかなくなりますが
ARBでは肺炎発症リスクも低下させていません。
サブ解析で、アジア人のリスク減少が有意に低下し、
非アジア人では有意な差がぎりぎり出ないところは興味深いです。
(サブ解析)ACE阻害剤服用による肺炎リスク
アジア人   :OR 0.43(0.34-0.54)
非アジア人  OR 0.82(0.67-1.00)
日本人において薬価の高いARBを高齢者に使用するメリットは
ACE阻害薬に比べてはあまりないかもしれません。

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