[お知らせ]


2012年6月3日日曜日

薬剤師によるPsychiatry In Primary Care


厚生労働省が実施している患者調査によればうつ病の患者数は2008年で104.1万人。
2008年の糖尿病の総患者数は約237万人からみると、その数の多さが実感できると思います。これは薬局外来においてもその多くに何らかの精神疾患を抱えている患者が多数存在することを意味しています。プライマリ・ケア医の患者の30%以上が精神疾患に罹患し、
少なくとも5%がうつ病であるという報告もあるそうです。

うつ病の自殺者も年々増加し、それを阻止する“ゲートキーパー”の存在が重要となっています。厚生労働省自殺・うつ病等対策プロジェクトチームにおいて、
「薬剤師は、過量服薬のリスクの高い患者を早期に見つけ出し、適切な医療に結びつけるためのキーパーソンとして重要な役割を担うと考えられる」
としています。
地域薬局の薬剤師は“ゲートキーパー”の役割を担うべき存在となってきているのです。
実際に薬局へ訪れる患者の3割近くが何らかの精神疾患を抱えていることを考えればその重要性があらためて認識されます。

しかしながら実際にどのようなアプローチで精神疾患の患者を見つければよいのか。
一つの手法として「Psychiatry In Primary Care:PIPC 」というものを学びました。

(参考)http://pipc-jp.com/ 

薬剤師においてもこのスキルを習得することで精神科領域のトリアージを行うことが可能になるといえるのではないでしょうか。
薬剤師が実践するPIPCの目的は患者を治療し助けることではありません。
治療が必要な患者を見つけ出し、専門医へ受診勧奨を行うトリアージにあります。

少し具体的にPIPCを説明すると以下のような感じです。
PIPCの中核を担うのがMAPSOシステムです。
MAPSOシステムとはプライマリで遭遇する頻度が高い精神疾患をまとめたものです。

M (Mood):気分(うつ・躁)に関するエピソードをチェック
A (Anxiety):不安(パニック障害、強迫性障害などの5疾患)をチェック
P (Psychosis):精神病症状(幻聴、妄想など)の有無
S (Substances):アルコールなどの物質誘発性による障害の有無
O (Organic / Other):器質的疾患(認知症など)や、その他の精神疾患
         (パーソナリティー障害、発達障害など)の可能性の有無
基本的には問診票に沿って質問をしていくだけです。
問診に沿って適切に会話するだけでうつ病の改善が期待できる可能性があるといわれています。また何より早期に精神疾患を発見することで、専門医へ受診勧奨できるという点で
非常に有用ではないかと考えています。

最後に希死念慮を持つ患者への対処として,紹介した病院の受診を約束する「指きり」というのが重要なポイントであると学びました。まじめで律儀な性格が多いうつ病患者にとって約束は効果的だといいます。

PIPCを実践できる薬剤師を目指すことで薬剤師の在り方が少しずつ変わってくるのかもしれません。

0 件のコメント:

コメントを投稿