日本呼吸器学会の「咳嗽に関するガイドライン」によれば慢性咳嗽は、
“胸部X線の異常陰影や喘鳴などの有意な身体所見を示さず
8週以上持続する咳嗽“と定義される。
GERDによる慢性咳嗽は増加しているという。
Geography and cough aetiology. Pulm. Pharmacol. Ther., 20, 383~387(2007)
GERDによる慢性咳嗽が疑われる場合ガイドラインでは
PPIによる診断的治療が推奨されている。
GERDによる咳発生機序は以下の2点が指摘されている
*下部食道括約筋の一過性弛緩の頻度増すことで胃酸が
下部食道の迷走神経受容体を刺激し、
中枢を介して反射性に下気道に刺激が伝わり咳が発生。
*逆流内容物が上部食道から咽喉頭に到達したり
下気道にまで誤嚥され直接の刺激となり咳が発生。
Cough and gastro-oesophageal reflux disease.
Pulm. Pharmacol. Ther., 17, 403~413(2004)
喘息患者におけるGERDの合併頻度は健常者よりも高いといわれている。
current status and future directions. Postgrad. Med. J., 80, 701~705(2004)
喘息治療におけるPPIのアプローチを考察してみたい
JAMA. 2012;307(4):373-380
胃食道逆流症状のない小児喘息患者306人。
ランソプラゾール群で喘息コントロールのACQスコアの改善は見られず、
呼吸器感染リスクが増加RR1.3(95%CI 1.1-1.6)
Am. J. Respir. Crit. Care Med. 2010; 181: 1042-1048.
GERD症状のある喘息患者にエソメプラゾール40mg1日1回
又は2回投与をプラセボ比較。
早朝のピークフロー変化に有意差なし。
両投与群とも、Asthma Quality of Life Questionnaire total score 有意な改善
エソメプラゾールは呼吸機能と喘息関連QOLを改善するかもしれない。
しかしながら、臨床的にはかなり小さな影響。
しかしながら、臨床的にはかなり小さな影響。
Arch Intern Med. 2011;171(7):620-629
成人喘息へのPPI、11件のメタ分析。
朝の最大呼気流量(PEFR)のベースラインからの平均変化量。
PPIを成人の喘息患者に投与すると、PEFRに有意な改善が見られるが、
改善は臨床的に意義のあるレベルではない。
なおサブグループ解析は、
GERD患者例患者のみの検討で、朝PEFの大幅な改善傾向
現段階で喘息治療にPPI投与を積極的に支持するエビデンスは少ない。
特にGERDのない患者ではその効果は期待できないといえる。
逆にPPI長期投与におけるリスクを考慮しなくてはいけない。
Clostridium difficile–associated diarrhea (CDAD)リスク増加
骨折リスク増加
*BMJ 2012;344:e372.
コホート研究 年齢調整でHR1.35(1.13-1.62)
*Annals of Family Medicine 9:257-267 (2011)
メタ分析 調整OR 1.29:(1.18-1.41)
喘息におけるPPIの漫然投与は、少ない臨床効果よりもリスクを考慮すべき。
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