[お知らせ]


2012年4月25日水曜日

何かについて全てを、全てについて何かを


薬剤師としてどう医療と向き合うか。

神戸大学附属病院には感染症内科という診療科があります。
診療科長の岩田 健太郎 先生のお言葉が心に響いています。
http://www.med.kobe-u.ac.jp/ke2bai/contents/greeting/index.html
から引用いたします。

 「私たちがお会いするのは、ほとんど全ての病気を持っている患者さんです。だから、たくさんの病気について、ある程度は知っているよう広く広く勉強しています。一方、私たちは感染症については深い知識を持つ専門家でもあります。「何かについて全てを、全てについて何かを」知り、患者さんの最大の利益と幸福はどこにあるのか一所懸命探していきたい。これが私たちの目標です。」

引用終わり

調剤薬局の薬剤師は特定の病院だけでなく
様々な患者さんとお会いする機会があると思います。
そのためにたくさんの病気についてある程度は広く広く
勉強しなくてはいけません。
一方で私たちは医薬品の専門家です。
医薬品については深い知識を持てるよう日々努力しなくてはいけません。

「何かについて全を、すべてについて何かを」

患者さんの最大の利益と幸福はどこにあるのか一所懸命探していきたい。
私は薬剤師ですが目指すところは同じです。

2012年4月20日金曜日

薬剤師の存在意義


処方箋ありきでの業務のみではそこに存在意義は見出せないだろう。
自分自身、まだまだ不完全ではあるが、処方箋を見るだけでなく
しっかり患者さんを見ていきたいと考えています。

 ずっと読んでみようと思っていたものの
なかなか時間がなく放置されていました。
さっと目を通してみました。

A pharmacist-led information technology intervention for medication errors (PINCER)
: a multicentre, cluster randomised, controlled trial and cost-effectiveness analysis
The Lancet, Early Online Publication, 21 February 2012.
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(11)61817-5/fulltext


主要評価項目
6か月のフォローアップ後の
1)消化性潰瘍の患者へPPIの併用なしでのNSAIDsの使用
2)喘息既往者へのβブロッカー投与
3)腎機能検査なしでの75歳以上の患者に、
  ACE阻害剤またはループ利尿薬の長期的使用

72施設の480 942 名を対象に
投薬過誤に対する薬剤師主導の情報技術(IT
による介入効果を無作為化比較試験で検証

介入群では対照群に比べ、有意に誤投薬が減少
非選択的非ステロイド抗炎症薬
 OR 0·58, 95% CI 0·38—0·89
β遮断薬
 0·73, 95% CI 0·58—0·91
ACE阻害薬またはループ利尿薬
 0·51, 95% CI 0·34—0·78

information technology interventionってなんだろうと思ったが
これはもしかすると日常業務における、
薬歴に基づく処方監査・疑義照会ではなかろうか。
本来であればリスク0でなければいけない。
投薬過誤が有意に少なかったとあるが、
この結果に満足しているようでは薬剤師に未来はない。


もう一つ
薬剤師ケアによるインパクト
Impact of Pharmacist Care in the Management of
Cardiovascular Disease Risk Factors
A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Trials
Valérie Santschi et. al.
Arch Intern Med. 2011;171(16):1441-1453.
doi:10.1001/archinternmed.2011.399
http://archinte.ama-assn.org/cgi/content/abstract/171/16/1441?etoc

薬剤師ケアは有意に
収縮期・拡張期血圧を下げる
 19 研究 [10 479 患者]; –8.1 mm Hg [95% CI, –10.2 to –5.9]
                –3.8 mm Hg [95% CI,–5.3 to –2.3]
総コレステロールを下げる
 9 研究 [1121 患者]; –17.4 mg/L [95% CI,–25.5 to –9.2]
LDL
コレステロールを下げる
 7 研究 [924 患者]; –13.4 mg/L [95% CI,–23.0 to –3.8]
喫煙リスクを減少させる
 2 研究 [196 患者]; 相対リスク, 0.77 [95% CI, 0.67 to 0.89]

ここに示されているのはあくまで代用のアウトカムであるが、
薬剤師が患者の真のアウトカムを念頭に置いたうえで
指導を行えば、全体の臨床アウトカムが
よりよい方向に向かうと信じて頑張りたいと思います。

2012年4月15日日曜日

evidence biased medicine

evidence biased medicine
evidence based medicine
おなじEBMだが、これほど大きく異なるものはない。

エビデンスを吟味してそれをどう使うかということが
この2者への分かれ道。

今日は久々にEBMのワークショップに参加しました。
患者さんに治療を受けさせたいという思い
自分が治療を受けるとしたらという思い
そこには大きなギャップがあることをあらためて
考えさせられました。

たとえば自分が患者だったら
どのような疑問を医療者にたずねるだろうか。

エビデンスありきで患者さんへ無理やりあてはめていることも
あったのではないだろうか。

いままでの自分を振り返り
もしかしたら、evidence biased medicine
(根拠によってゆがめられた医療)
をしていたかもしれないと思いました。

いつもながらエビデンスを読み込むほど
結局、どうすればよいのかわからなくなります。
有意差なし、ということにはあまり意味がないかもしれません。
信頼区間から、どの程度効果があるのか検討することも大切です。

また薬剤介入は必ずしも患者さんのQOLを改善しません。
むしろ、通院や服薬という負担、経済的負担
食事療法を強いられたりすることによりQOL
少なからず低下します。

たとえ効果があるという結果だとしても
その結果が、今、目の前の患者が本当に満足できる
結果なのかどうか、ここはよく検討しなくてはいけません。
論文の批判的吟味以上に重要なポイントであることを
なんとなくですが今日思いました。

EBMの実践。その一連の行動自体に
バイアスがないかどうかということを常に意識することが大切です。

最初から明確な答えなどないのかもしれません。
EBM、これは患者さんとのかかわり方だ、というように感じます。

2012年4月12日木曜日

スポーツファーマシストとして

たとえばプロのスポーツ選手が
風邪気味などで薬剤を服用する場合、通常の医薬品が
ドーピング検査に引っかかるのを恐れるあまり
漢方薬なら安全という錯覚に陥る可能性があります。

1984年のロサンゼルスオリンピックにおいて、
葛根湯を服用してドーピング検査で陽性が出た事例。
葛根湯の構成生薬である、
麻黄にはエフェドリンが含まれており
これが禁止薬物に該当します。
インフルエンザなどでも多く処方される麻黄湯ももちろん
ドーピングで陽性反応が出る可能性があります。

昨年、ある講演会で耳鼻咽喉科の先生から
プロのスポーツ選手の花粉症治療に
ステロイド鼻噴霧を使用して問題ないか?
という質問を聞き、まともに答えられない自分がいた。

スポーツファーマシスト認定証が本日届きました。
漢方やサプリメントなら大丈夫そう、のような、
うっかりドーピングを避けるためにも
薬剤師としてできる限りの活動をしていきたいと思います。

薬剤師のためのドーピング防止ガイドブック2011年版
2012年禁止表国際基準
治療目的使用に係る除外措置に関する国際基準
地域にいるスポーツファーマシストの検索

2012年4月9日月曜日

睡眠時間と死亡リスクの関係

「寝すぎは体に良くないですか?」
という質問が寄せられた。なんとなく寝すぎは体に
よくなさそうだけど、睡眠時間はどのくらいが適切なのだろうか。

Pubmedで調べてみた。
まずはClinical Queriesから検索ワードに
Sleep mortality japan そしてPrognosis/Narrowで検索
検索式は(Prognosis/Narrow[filter]) AND (Sleep mortality japan)

さらに free full textで絞り込むと9件が検索される。
201249日現在、上から5番目に
Sleep duration and mortality in Japan:
the Jichi Medical School Cohort Study
J Epidemiol. 2004; 14: 124-8.が見つかる。

自治医科大学コホート研究。12地域の
1993歳の12490人のうちで心筋梗塞,脳卒中,癌の既往がなく,
睡眠に関するデータの不備のない11325
(男性4419人,女性6906人)を対象に平均8.2年間追跡
平均年齢:男性55.0歳,女性55.2
1日の睡眠時間は面接により
以下のカテゴリーに分類
「6.0時間未満,6.06.9時間,7.07.9時間,8.08.9時間,9.0時間以上」

平均睡眠時間は,男性7.8時間,女性7.4時間

睡眠時間カテゴリーごとの
全死亡の調整ハザード比(95 %信頼区間)は
6.0時間未満: 男性2.41.3-4.2,女性0.70.2-2.3
6.06.9時間: 男性1.10.7-1.8),女性1.30.8-2.1
7.07.9時間: 男性1.0,女性1.0(対照)
8.08.9時間: 男性0.90.6-1.2),女性1.10.8-1.6
9.0時間以上: 男性1.10.8-1.6),女性1.51.0-2.4

男性では睡眠不足(6時間未満)、
女性では寝すぎ(9時間以上)で死亡リスクと関連している。

8時間睡眠がよいという俗説は意外と正しいかもしれません。
ただ、睡眠の質というのも重要なファクターであり時間は
あくまで一つの要素であります。
睡眠不足から体調を崩すこともあるでしょう。
規則正しい生活が大切です。